前頭側頭葉変性症
前頭側頭葉変性症(FTLD)は人格変化、情動異常、言語障害などを特徴とする認知症の1つであり、初老期に多く発症し、若年性認知症の中では2割近くの割合を示すとも言われています。
前頭側頭葉変性症は、大脳の前頭葉や側頭葉などで神経変性が起こり、人格変化や、認知機能障害、失語症、運動障害などがゆるやかに進行する神経変性疾患です。
神経変性疾患とは脳や脊髄にある中枢神経の神経細胞のなかで、ある特定の神経細胞群が徐々に障害を受け脱落し(=神経細胞死)、発症する病気のことです。
原因としては、前頭葉や側頭葉に神経細胞の脱落がみられ、残った神経細胞に異常な蛋白が蓄積していることが知られています。
なぜこうした変化が起こるかはまだ解っていません。
症状
行動障害
- 毎日同じコースを同じパターンで繰り返し歩く常同的周遊(周徊)や、同じ時間に同じ行為を毎日行う時刻表的生活が起こります。
- 礼節や社会通念が欠如し、他の人からどう思われるかを気にしなくなり、自己本位的な行動が抑制できなくなったり、万引きや盗食などの反社会的行動をするようになります。
- ひとつの行為を持続して続けることができない注意障害がみられる。
- 理性で行動を抑制できないため、人が話している最中に突然ごみを拾い出すなど、状況を読まずに目についたものに即座に反応したりします。このような行動を「被影響性の亢進」と呼びます。
- 過食傾向が顕著になり、また、濃厚な味付けや甘い物を好むような嗜好の変化がみられます。
- 自分や周囲に対して無関心になり、自発性が低下します。
- 共感したり、感情移入することが困難になります。
言語障害、意味記憶障害
- 「あれ」とか「それ」などの表現が多くなり、意思疎通が難しくなる、意味記憶障害がみられます。
- 言葉の意味の理解や、物の名前などの知識が失われる、意味性失語がみられます。また、物の名前が言えない語想起障害や、複数の物品から指示された物を指すことができない再認障害がみられる。
- 人の言葉や文字を理解できるけど、言いたい事が言葉にならない。 名前を聞いても答えられないなど、 言葉が思い浮かばない「運動性失語」がみられます。会話のリズムとアクセントが障害される言語障害は進行性非流暢性失語にて見られる症状ですが、(行動異常型)前頭側頭型認知症においても認められることがあります。
治療法
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)などの抗うつ薬が行動異常の緩和に有効という報告がありますが、まだ病態のメカニズムについてはほとんどが不明で、根本的治療薬はいまだ確立していません。