腰部脊柱間狭窄症

先天性に軽度の脊柱管狭窄が存在し、これに加齢に伴う椎間関節や黄色靭帯の肥厚、椎間板の突出、脊椎のすべり症などが伴い、腰部脊柱管狭窄症の特徴的な症状となります。慢性腰痛、下肢痛および間歇性跛行(最初の数分間歩くと下肢にしびれ脱力が生じて歩けなくなる)が主な症状です。

間歇性跛行には大きく分けると神経性間歇性跛行と血管性間歇性跛行があります。

血管性は下肢の動脈硬化による筋肉への血行障害により生じますが、腰部脊柱管狭窄症については神経性間欠性跛行が生じます。

一般的に坐位や腰をかがめたりすると改善するので、調子のいいときと悪いときがありますが、次第に歩行距離が短くなり、日常生活が困難になっていきます。ほとんど歩けない場合でも腰を2つ折りにするとか、前屈して自転車には乗れたりするケースもあります。

下肢の筋力は正常であることが多いが、圧迫が強くなると下肢筋力が低下して、歩行不可能になったり、排尿遅延、頻尿、排尿困難などの膀胱直腸障害も発生することがありますので、男性であれば前立腺肥大症、女性であれば老化による尿失禁とよく間違えられます。

最終的には下肢の麻痺や尿閉となり、歩行できなくなくなることも考えられます。

鑑別疾患(似たような特徴を持つ別の疾患)

閉塞性動脈硬化症

腹部大動脈および下肢動脈の動脈硬化のために血液の流れが悪くなり、慢性の血流障害を起こした病態をいいます。

下肢の血液が流れにくくなるために、特に足先の冷たい感じやしびれがおこり、歩行が困難になり、放置しておくと足先が壊死(えし=組織の一部が死んだ状態)を起こし、下肢切断に至ることもあります。

また、動脈硬化からおこる合併症として、狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患や脳梗塞などの脳血管障害をきたすこともあります。

閉塞性動脈硬化症は進行性の病気であり、症状の進行はフォンテイン分類(I度〜IV度)によって4段階に分けられています。

I度は下肢の冷感、しびれ、II度は間歇性跛行(一定距離の歩行によって筋肉痛が起こり、休息後再び歩行可能になる)、III度は安静時の下肢の疼痛、IV度は下肢の皮膚潰瘍、下肢壊疽に分類されます。

治療は、症状の進行程度に応じて、薬物療法や外科的治療が用いられます。


I度:足の冷感、足のしびれ

左右の足で温度や皮膚の色に差が出てきます。ぴりぴり・じんじん・チクチクなど色々な感じ方があります。

II度:間欠性跛行

一定の距離を歩くと足の裏やふくらはぎが痛くなったり力が抜ける感じがして、歩けなくなります。 しばらく休むとおさまって、また歩けるようになります。

III度:安静時疼痛

歩かなくてもじっとしているだけで足が痛むようになります。 痛みのために夜眠れないこともあります。

IV度:潰瘍・壊疽

この潰瘍は本来激しく痛むのですが、糖尿病の患者さんは神経障害のために痛みをあまり感じない場合もあるので特 に注意が必要です。

腰部脊柱間狭窄症と閉塞性動脈硬化症の間歇性跛行にみる違い

両方の症状として間歇性跛行があげられますが、その痛み方や表れかたには違いがあります。

腰部脊柱管狭窄症による間欠性跛行の特徴

慢性腰痛が伴ったり、最初の数分間歩くと下肢にしびれ脱力が生じて歩きづらくなります。
一般的に坐位や腰をかがめたりすると改善するので、調子のいいときと悪いときがありますが、次第に歩行距離が短くなります。
ほとんど歩けない場合でも腰を2つ折りにするとか、前屈して自転車には乗れたりするケースもあります。


閉塞性動脈硬化症による間歇性跛行の特徴

通常は腰痛を伴わず、下肢痛は片側性が多くみられます。
歩行によって下肢筋肉に疼痛が起こり、しばらく歩けなくなりますが、歩行をやめ休息すると回復して再び歩行が可能になります。
症状が進むと、歩行可能距離が短くなり、すぐに疼痛があらわれます。

前の記事

アルツハイマー型認知症

次の記事

腰椎すべり症