むせる
食事中にみそ汁やお茶を飲むとき、薬を水で飲む時などに、むせて苦しい経験をしたことはありませんか。食べ物や唾液は、普通、下咽頭から食道へという、気管の後ろ側(背中側)にある道すじを通ります。ところが、誤って息が進んで行くほうの喉頭から気管へと入っていくと、気道が刺激され、せきがでます。これが「むせる」という状態です。
飲食物が気管に入ることを、医学用語では「誤嚥(ごえん)」と言います
誤嚥(ごえん)と、誤飲(ごいん)
誤嚥と似た言葉に、誤飲があります。
この二つは混同しやすいですが、誤飲は食物以外の物を誤って口から折衝してしまうことを指します。
高齢者が薬の袋を開けないでそのまま飲んでしまった、といったうことがありますが、これが誤飲です。
摂食・嚥下障害とは
摂食・嚥下障害とは、口から食べる機能の障害のことです。
「摂食」とは”食べること”を、「嚥下」とは”口に入れた飲食物を胃まで送り込む、飲み込むこと”をあらわします。
人は、飲食をするとき
1 目やにおいでて食べ物を認識する
2 口から食べ物入れ、咀嚼(そしゃく)する
3 舌や頬を使い、食べ物を口の奥からのどへ送る
4 脳にある嚥下中枢からの指令で、食べ物を食道へ送る
5 食べ物を胃へ送り込む
という一連の動作により、食物や液体を摂取しています。
これらの動作の1つまたは複数が何らかの原因で正常に機能しなくなった状態を「摂食・嚥下障害」と呼びます。
高齢者の場合は、加齢とともにおこる歯・義歯の問題、舌の運動機能の低下、咀嚼能力の衰え、唾液の分泌量の低下、口腔感覚の鈍化、咽頭への食べ物の送り込みが遅くなるなどの機能的な変化により、摂食・嚥下障害を起こしやすくなります。
摂食・嚥下障害を起こすと、栄養状態が低下したり、脱水症状を起こしたり、食べ物が気道に入ることによる誤嚥性肺炎などの問題が起こります。
病気が隠れていることも
ひんぱんにむせる場合、喉頭や下咽頭の腫瘍や神経系の病気が隠れていることがあります。
また、高齢者でなくてもたまにむせることはありますが、食事の度にむせる、1日数回以上むせる、といった場合は、脳卒中や神経内科の病気の症状のことがありますので、要注意です。
むせる、ことで起こる代表的な病気
誤嚥性肺炎
「誤嚥」し、「むせ」が起こっても気管に入った食べ物・唾液を出すことができずに、肺炎を起こすことがあります。これが「誤嚥性肺炎」です。特に、体力の低下した高齢者や脳血管疾患の患者様に多いといわれています。また、はっきりとした「むせ」がなくても「誤嚥」がおこっており、「誤嚥性肺炎」となることもあります。