重症筋無力症
重症筋無力症( MG )は、筋肉の力が弱くなる病気です。全身の筋力が弱くなったり、疲れやすくなったりします。また、まぶたが下がってくる眼瞼下垂(がんけんかすい)と、ものが二重に見える複視(ふくし)などの眼の症状を起こしやすい特徴があります。
全国で16431人(平成21年)の登録があり、厚生省の特定疾患(難病)に指定されています。
男女を比べると、男性より女性が1.5~2倍多いとされています。
原因は、神経から筋肉への指令が伝わらなくなること
神経と筋肉が接する場所(神経筋接合部)で、神経の末端から筋肉に向けて放出され、脳からの指令を伝える役割をするアセチルコリンという物質があります。重症筋無力症では、全体の約85%が、その指令を受け取るアセチルコリン受容体の働きを妨げる抗体(抗アセチルコリン受容体抗体)が体内で作られて、脳からの指令が筋肉に伝わりにくくなることが原因とされています。
次に全体の数%が、筋特異的 受容体型チロシンキナーゼ(MuSK)に対する抗体と考えられています。
なお、残りの約10%の方は、まだ原因が特定できていません。
症状
- 眼の周りの筋力の低下
まぶたが落ちてくる、ものが二重に見える、目が疲れる、まぶしいなど - 口の周りの筋力の低下
のみこみにくい、かみにくい、食べたり飲んだりするとむせる、つばがあふれる、しゃべりにくい - 顔の筋力の低下
表情がうまくつくれない、笑おうとしても怒ったような顔になる - 手足の筋力の低下
立てない、歩けない、階段が昇れない、ものを落す、字が書けない - 呼吸筋の筋力の低下
息がしにくい
治療法
- 一時的な対症療法としては、コリンエステラーゼ阻害薬という、神経から筋肉への信号伝達を増強する薬剤を使用します。
- 治療の基本は 免疫療法 で、この病気の原因である抗体の抑制には、ステロイド薬、免疫抑制薬があり、ステロイド薬は飲み薬としても点滴としても使われています。
- そのほかには、抗体を取り除く 血液浄化療法 、大量の抗体を静脈内投与する大量ガンマグロブリン療法、補体C5を 特異的 に阻害する抗体製剤があります。
- 胸腺摘出術
胸腺の異常として、胸腺腫を合併する場合は、まず外科的にこれを取り除く必要があります。