筋萎縮性側索硬化症(ALS)
筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは、手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉がだんだんやせて力がなくなっていく病気です。
体を動かすときに必要な筋肉を随意筋と呼びます。この随意筋を支配する神経が運動ニューロンです。筋萎縮性側索硬化症は、この運動ニューロンが侵される病気です。
運動ニューロンには、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)の2つがあり、これらの運動ニューロンが侵されると、筋肉を動かしにくくなったり、筋肉がやせてきます。
1年間にこの病気にかかる人は人口10万人当たり1~2.5人で、男女比は男性が女性の1.2~1.3倍。最もかかりやすい年齢層は60~70歳台です。
原因はまだ解明されていませんが、神経の老化に関連があると考えられています。
筋萎縮性側索硬化症のうち約5%は家族歴を伴い、家族性筋萎縮性側索硬化症と呼ばれています。
症状別に、大まかに3つのタイプに分けられます。
- 上肢の筋萎縮と筋力低下が主体の上肢型(普通型)
多くは指先の麻痺、手の筋萎縮で発症。進行すると筋のピクつきや関節の痛みがあらわれます。 - 下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられる下肢型(偽多発神経炎型)
歩行時のつっぱりが初期には多くみられ、進行すると足の麻痺、転倒しやすい、筋萎縮などが加わります。足先の麻痺(足首が上がらない)で発症することもあり、また筋のピクつき、筋痛や関節痛もあらわれます。 - 構音障害、嚥下障害といった球症状が主体となる球型(進行性球麻痺)
顔・舌・のどの麻痺、筋萎縮があらわれます。
しゃべりづらい 口腔期嚥下障害 咽頭期嚥下障害 |
意思が伝わらず、イライラする。 かみにくい、かまずに飲み込む、口元からこぼれるなど 飲み込みにくい、喉につまる、むせるなど |
これ以外にも、呼吸障害が初期から起こる例や、認知症を伴う例もあり多様性がみられます。
対処法としては、下記の方法があります。
1)ALSの進行を遅らせる作用のある薬を使用
グルタミン酸拮抗剤リルゾール(商品名 リルテック)他
2)対症療法(様々の症状を軽くする方法)
- 筋肉や関節の痛みに対する毎日のリハビリテーション
- 体の不自由・不安等から起こる不眠に対して 「睡眠薬」や「安定剤」を使用。
- 呼吸困難に対して
鼻マスクによる非侵襲的な呼吸の補助と、気管切開による侵襲的な呼吸の補助。 - のみ込みにくさに対して
食物の形態を工夫(原則として柔らかく水気の多いもの、味の淡泊なもの、冷たいものが 嚥下 しやすい)する、少量ずつ口に入れて嚥下する、顎を引いて嚥下するなど摂食・嚥下の仕方に注意してください。 - 5) 話しにくい、手の力が入らないなどの症状進行に対して
家族や他のヒトとのコミュニケーションが大変になるため、早めに新たなコミュニケーション手段の習得を行うことが大切です。